執筆 デイビッド 監修 Ionis
Ionis社の最新の臨床試験開始発表に伴い、本試験についてより明確な理解を提供することを目的としています。特に、MECP2重複症候群(MDS)のような希少疾患の場合、子供を治験に参加させることを検討しているご家族にとって、これは極めて重要です。
臨床試験とは、新たな治療法の可能性を調査し、その安全性や人体への影響を評価するための研究です。臨床試験は多くの場合、より大規模な臨床開発プロ グラムの一部として実施されます。臨床開発プログラムとは、第1相から第3相までの段階的な臨床試験を通じて、新しい薬や治療法が十分に安全で、実際に有効であるかを確認するために行われる一連の試験です。
MDSの場合、Ionis社はまもなく、ION440と呼ばれる新たな治療候補を評価するための初めての臨床試験を開始します。この研究は「ATTUNE」と名付けられ、最近Ionis社がウェブサイトclinicaltrials.govで発表しました。
この意味を紐解いてみよう。
第1/2相臨床試験: 第1相臨床試験は、新薬を初めて人に投与する段階です(「ファースト・イン・ヒューマン試験」とも呼ばれます)。第1相臨床試験は主に、異なる用量での治験薬の初期の安全性と忍容性を確認することを目的としていて、通常は小規模で比較的短期間に実施されます。第2相臨床試験は、より多くの人を対象に、より長期間にわたって治験薬の影響を調査することにより、安全性の追加的な証拠を提供するものです。多くの場合、ATTUNEを含む第2相臨床試験では、治験責任医師は、治験薬の異なる用量に対する反応を理解しようとます。ATTUNE試験は、第1相臨床試験と第2相臨床試験を組み合わせたものです。
無作為化、二重盲検、偽薬対照: これは、治験者が無作為に割り当てられ、3対1の割合でION440治療群(3人)または偽薬治療群(ION440注射は行わず、治療群と同じ鎮静手順のみを受ける1人)に振り分けられることを意味します。治験者も研究者も、誰が本当の治療を受け、誰が偽薬を受けたかは知りません。
対照群は、(1)病気の徴候や症状が人によって異なる場合、(2)臨床試験で調査される特定の集団における自然歴が限られている場合、(3)臨床試験の目的が、主観的またはバイアスの影響を受けやすいと考えられる方法で捉えられる可能性がある場合、(4)登録された特定の集団が、ION440を投与するために必要な鎮静や腰椎穿刺のような特定の種類の処置にどのように反応するかについて理解が限られている場合に、しばしば使用される。
多段階用量漸増試験(MAD): これは、研究者が異なる治験者グループに対して順次用量を増やしながら治験薬を投与し、どの程度の用量まで安全に投与できるかを確認することを意味します。
試験パート1およびパート2: ATTUNE試験は2つのパートに分かれており、試験に参加が認められた人は全てパート1から開始します。パート1では、75%の治験者にION440が投与され、25%の治験者に偽薬が約36週間投与されます。Ionis社が試験の初期段階における安全性審査を無事に完了した後、パート1を完了した治験者は、パート2と呼ばれる非盲検延長(LTE)期間中に、最長156週間ION440を投与される機会を得ます。
安全性、忍容性、薬物動態、薬力学: これらは、ION440の第1相・第2相臨床試験における目標を示していて、ION440投与後に観察される副作用の有無や内容、体内でのION440の動き(薬物動態)、およびION440が人体に与える影響(薬力学)を評価します。
参加基準および除外基準 これらは、臨床試験に参加できる人を決めるためのルールです。例えば、この試験では、参加者は男性で、年齢が2歳から65歳で、MDSの診断が確定していて、すべての試験手順を完了できることが求められてます。参加を妨げる条件もあります。例えば、複雑なタイプのMDSを患っている、特定の健康状態がある、または特定の薬剤で治療を受けている場合などが該当します。
臨床試験への参加は任意であり、参加が子供のためにならない感じた場合、ご家族はいつでも参加を中止することができることを理解しておくことが重要です。
臨床試験開始: ATTUNEの開始予定日は2024年8月です。ただし、このスケジュールは、倫理委員会の承認、契約締結、ならびに試験を実施する各病院で必要とされるその他の施設固有の承認などの規制手続きによって変更される可能性があります。患者登録は、Ionis社と病院の両方がすべての承認に署名した時点で開始されます。
臨床試験は、医学的知識を進歩させ、新しい治療法を見つけるために必要不可欠なもので、希少疾患に罹患している個人やご家族に希望を与えるものであることを忘れないでください。
ION440は治験薬であり、MDSを含むいかなる疾患の治療薬としても、どの国でも承認はされていません。健康状態の変化や医療全般について質問がある場合は、医療提供者にご相談ください。
2024年9月末までに開催予定の、臨床試験とATTUNEに関するウェビナーにご期待ください。